戦争を知る世代

 私は戦争を体験してない世代です、もちろん。誰だ、疑わしそうな目で見てるのは!本当だってば!
 うちの両親は昭和一桁生まれなので、戦争を知る世代です。さすがに戦争に出征した経験はないですけど。今は亡き伯父は、戦争が長引いていれば、出征していたはずでした。一方で、私が生まれる前になくなった伯父もいて、この人は父の兄弟で次男だったんですが、大戦中は学生でした。最初のうちは、学生は出征しなくて良かったんだよね、確か。が、もともとたいして丈夫じゃない人なのに、学徒動員だかなんだか知らないけど、勉強なんてさせてもらえずに、軍需工場で過酷な労働を強いられたりして、病に倒れてしまいましたそうな。病といっても盲腸で、今だったら薬で散らすとかチョイチョイっと切ってチョイチョイと安静にしていれば、それほど命にかかわる病気というわけでもないのに…。当時は、本当に病気になったとしても、
「国が大変なときに寝ているなんてけしからん。」
という風潮だったようで、無理を重ねているうちに腹膜炎か何かになってしまって、入院したときにはもう手遅れの状況だったそうです。
 この伯父さん、写真を見せてもらったことがありますが、妙にうちの父親に似ていて、兄弟だから似ていて不思議じゃないけど、他の兄弟の誰より似ているのでビックリ。すんごくやさしい人だったみたいで、他の兄弟姉妹からも慕われていたようです。何より、両親つまり私にとっては祖父母に対して親孝行このうえない人だったので、悲しみもひとしお。
 が、妙なことに、他の伯父や伯母たちは自分の子供にはこの兄弟のことを言ってなかったみたいで、以前法事のときにこの伯父の話題になったら、いとこ達はキョトンとしてました。むしろ、
「なんでたじんこちゃんは知ってるの?」
なんて不思議がられた。
 出征はしてないにしても、第二次大戦のころの日本をリアルタイムで知ってる両親は、何かというとその話題になって、戦争の話にこの伯父さんの話はつきものでした。亡き父は、いつもシミジミと
「兄貴が生きていたらなぁ…。」
とつぶやいていたことを覚えています。
 戦争は、直接だけでなくて、こういう間接の被害者もいるんだよね。戦後60年というのは日本だけで通用する話。世界はまだ戦後を迎えてません。