ちがうっての

 今日、親会社であり売り上げ先でもある会社から、新製品の講習のために出張してきた方がいらっしゃいました。その新製品の開発担当が、例の「殿」なので、殿がその方をご案内し、機械の取り扱いなどについて説明していたようです。
 お昼ごはんから戻ったとおぼしき、お客さまと殿とすれ違ったので、お客様に向けて
「お世話になります。」
と会釈し、お客様も挨拶を返してくださって、お互いにアッチとコッチに向かってスタスタ歩いていったら、アッチの方から殿が、
「あれが、たじんこです。」
と説明し、お客様が
「あぁー。」
と納得されていました…。ちょっと待て。なんだその、あぁー、っていうのは。その後に、
「あれが悪名高い、たじんこですかー。」
って続きそうな言い方に聞こえるけど。私、そのお客様とは、電話の取次ぎの際に決まりきった会話を交わすだけで、(「お世話になります。」とか、そういう挨拶ね)あぁー、なんて納得させるような何かなど、無いはずです。
 とりあえず、もう一度振り返ってお辞儀したら、通路のアッチのほうで、殿が
「で、あれは私の秘書です。」
と言っているのが聞こえたので、慌てて
「ちがいます。ちがいます!」
と否定していたら、こんどはコッチの階段から経理課の常務が現れて、
「たじんこさん、何を大きな声で話しているんだい?」
と仰ったので、
「開発のMさんが、お客様を案内しながら、私のことを秘書だって紹介するから否定していたのです。」
と説明すると、常務は笑って、笑った拍子にむせながら、経理課の部屋に戻って行ったのでした。
 ううう、お客様にまで嘘言ってぇ…。全社員で70名足らずの会社には、秘書なんて要らないんだよ!社長にだって秘書なんて居ないのに!むきー!