散歩

 庭で、またしても花梨が変なものを咥えている。どうやら、柿の実の青いやつらしい。鳥の死骸よりはマシだが、そんなものを食べてゲホゲホされたら、これまた適わん。口に手を突っ込んで引っ張り合うも、敵はかなり強力に咥えていて、離さない。
「じゃあさー、この実と散歩、どっちがいい?」
引っ張りながら、耳元でささやいてみた。そうしたら、花梨の顔が
「ん?」
と変わった!
「散歩だよ、散歩。お・さ・ん・ぽ。これを離したら、散歩に・・・。」
と言い終わらないうちに、花梨は実をポロっと離して玄関へ一目散。あまりの変わり身の速さに、驚いた。ていうか、やっぱり散歩が一番好きなんだ。
 おかげで、数ヶ月ぶり(もしかして一年ぶりとかかも)に、散歩へ。思っていたより遠回りのコースになったが、まぁいいか。しかし、二度目の散歩で花梨も疲れたらしく、最後のほうではヨロヨロ歩きながら、チラチラと人の顔を見上げる。
「何だ、もしかして抱っこ?あとちょっとだから、ほれ、歩け。よいしょ、よいしょ。」
今まで、首吊りでもする気かと思うくらい、ゼーハー言いながらリードを引っ張った犬とは思えないな。やはり、花梨は年を取った・・・。