花梨

 私がファンヒーターの前でぬくぬくしていたら、
「あら、たじんこヒマ?ならちょっと遊んでよ。」
とばかりに、昔のおもちゃを持ち出してきた。これ、真ん中を押すとプープーと音がする。我が家では、”ピコピコ”という愛称がついている。が、このテのオモチャが何個もあるので、その形態に応じて”人形ピコ””ワニ・ピコ””ボール・ピコ””モー・ピコ”などがある。”モー・ピコ”のモーは、牛モーモーのこと。牛のぬいぐるみで、お腹を押すとピコピコじゃなくてブモーって鳴く…。
 花梨の遊び方というのは、自分で振り回したりして遊んだら、私のところへヌイグルミを持ってきて、グイグイと押し付ける。そんで、引っ張りっこをしようというのだ。で、引っ張ると尻尾を振りながら、唸る。怒ってるのか楽しいのか、どっちなんだ。で、手を離すと勝ち誇った表情をするも、またヌイグルミを押し付けてくる。ときに引っ張りっこに勝った私が部屋の隅にヌイグルミを放り投げると、嬉々として追いかける。あんたも猟犬の血が流れているのね。でも、私はそろそろお風呂の時間ですぞ。
 んで、ヌイグルミを、花梨の目が離れたスキに、上着の中に隠して、
「あれ?ピコが無い。ピコ、どこ?ピコ、どこ?あーれー?」
と白々しい演技をすると、花梨の目が部屋中を泳ぎ、ウロウロして面白いったらありゃしない。が、最近はやつも学習してきて、私がどこかに隠しているということが分かってきている。あんまり芸は覚えないくせに、そういうことはすぐに覚えるのな。
 そんなこんなで30分ほどお遊びにつき合わされました。人間の年齢で言えば、もうかなりのばあさんなんだけどなぁ。まだ遊びたいんだなぁ。