花梨

 会社から帰って、花梨が出てこないなぁ、と思ったら、床に散乱する毛布。自分の寝床の毛布をゲージの方まで引っ張って行って、そこで舐めたりしゃぶったり腰をヘコヘコしていたらしい。毎日のように、母が干してくれている布団と毛布だぞ。なんで自分のヨダレでべとべとにするかな!で、激怒した私に相当怒られた。で、取り上げた毛布を寝床に敷きなおしていたら、当然の如く上に乗っかって寝そべる花梨。なんというか、
「苦しゅうない。布団を敷いて、ご苦労であったぞよ。」
っていう感じ。むっかー!
「誰が乗っていいと言ったっ。お前はここで寝なくてよろしい!」
っと払いのけたら、力が入りすぎてすっ飛んだ花梨。ゴミバコにぶつかって呆然。が、呆然としながらも、まだ布団に乗ろうとするので、
「お前は怒られてるんだっ。反省しろっ。」
と更に怒ったら、
「あ、たじんこ怒ってる!ひ、ヒステリー?」
というような、びびった顔で母の居る茶の間に避難していきました。尻尾を丸めて母の背中の陰に隠れてプルプル。よし、少しは反省したようだな。
 いつも思うんだけど、犬に対して叱るタイミングとか方法が、どうも上手に出来ていないような気がする。だから同じイタズラを繰り返すし・・・。自分も、いつまでもプリプリしてしまって、時々怒りが調節できない。
 が、花梨がアホなのか、それとも飼い犬ってのは皆こんなもんなのか、30分もしないうちに人に擦り寄ってきてる。最初は母の方ばっかりくっついてきたけれど、私がゴハンを食べていたら
「何か私にくれるもの、ない?」
って顔でにじり寄る。
 かつてムツゴロウさんが言ってた。イタズラなどをしたペットを叱った後、いつまでも冷たくしていたらダメ。ピシ!と叱って、ペットがしょんぼりして一旦は離れたり逃げたりしても、ごめんなさいって飼い主に寄り添ってくるから、そのときはものすごく甘えさせてやった方が良い。いつまでも怒ったままツンケンしちゃいけない。
 そうですね!ムツゴロウさん!ってなわけで、自分の中で怒りを持ちつつも、花梨の背中をナデナデナデ。
 その後部屋に戻っても、寝たと思ったら起きて私の顔色を見に来る花梨が不憫になってしまったと同時に、自己嫌悪。あんな怒り方しなくても良かったのでは?というか、叱るときに感情的になったらダメじゃないか。そのときの自分の機嫌で、叱り方が普通だったり激しかったりしたら、花梨が可哀想。
 犬と人間を同じに考えたら怒る人もいると思うけど、私にとっては花梨と一緒に暮らすのは、子供を育てるのと同じと考えている。子供のしつけも同じで、最終的な物差しは私の考え方なんだけど、じゃあたじんこの考えってそんなに立派なものかよ、って言われたら、自分じゃ分からない・・・。
 子供が親を選んで生まれるわけではないように、花梨も飼い主は選べない。私と母が、元の飼い主のMさんとの都合で、我が家に迎え入れたんだった。もっと大事にしてやらないといけないんじゃないだろうか。