泣かせた話

 夕食のときに、母が
「今日、お向かいのAちゃんを泣かしちゃった。」
と急に言い出しました。Aちゃんというのは、私から見ると少し変わった子なんですが、今時の若い子は皆あんなもんかな、という感じです。別に不良娘で我が家も実害をこうむったとか、そういうことは全然ありませんでした。
 このAちゃんはかなりの動物好きで、特にネコが好きなようです。捨て猫やノラネコを見ると、放っておけないというタイプです。で、Aちゃんとその家族は、ノラネコにせっせとエサを与えています。その結果、我が家をはじめとして近所の家はフン害に悩まされています。夜ともなればナワバリ争いでウギャウギャとケンカを始めるし。私もかつてネコを飼っていたことがあるし、ネコは嫌いではないが、ノラネコの存在はあまり歓迎すべきものではないというのが今の考えです。
 母は、何かにつけて、Aちゃんの家の人に、ネコがゴミをあさったり、フンをところ構わずしていることを告げ、迷惑していることを伝えていたのですが、相手には伝わっていなかったようです。近所に回覧板がまわり、ノラネコにエサを与えないようにと注意されても、彼らの行動がやまることはありません。
 Aちゃんが帰ってきたとき、母はちょうど庭にいたので、挨拶の声をかけたところ、Aちゃんが
「ネコは最近、来ますか?」
と母に尋ねたので、母は
「毎日来てるみたいなんだけど、そのことなんだけどねぇ、Aちゃん。うちはノラネコがフンをしていったり、ゴミ箱をひっくり返してあさったりすることに迷惑しているのよ。ノラネコにエサをあげるのは止めて欲しいんだけど。」
とAちゃんに言ったところ、彼女は急に泣き出して家に入ってしまったのだそうです。
 ノラネコが可哀想という理屈は分かる。けれど、エサだけ与えて野放しというのも、無責任すぎると思うのです。ゴミ箱をひっくり返すのは、エサが足りてないからだと思うし。ノラのまま、繁殖してるし。
 ある地域では、地域ネコと言って、ノラを地域ぐるみで世話をしようという試みもあるみたいですけど、そういう形に持っていくまでも大変だよな。
 それにしても、Aちゃんももう大人なんだから、泣いてないで、反論するなりちゃんとペットとしてネコを面倒みるなり、それなりの対応はして欲しいもんです。