ぶつぶつ

 夜、母は私の部屋の隣で寝ています。夏のこととて、襖を開けっ放しにしてあるので、お互い丸見えです。
 母は、布団に寝そべりながらテレビを観ています。お気に入りは、クイズ番組。なにやらブツブツ言う声が聞こえてきて、何かと思ったら、漢字のクイズに回答していました。おかーさん、出演者じゃないんだから、心の中で答えていたらいいのよ。そして、読めない漢字の解答を聞いて、
「ほえー。」
「難しいねー。」
「これは、ほとんど当て字ね!」
と感想まで述べています。
 母は若いころは読書家だったそうで(自称)、結構漢字に強いです。あと、文学の知識もわりとあるんじゃないかと思います。母は高校を卒業後、就職したのですが、同期に才女で鳴らした人がいたそうで、しかも新人は母と才女の二人しか居なかったわけですから、母はとても引け目を感じたようです。あるとき赴任してきた上司が、非常に知識豊かな人だったそうで、時々母に
「たらちね、という言葉を知ってるかね。」
などと問い、母が分かりませんと答えると、
「調べてきなさい。」
と言い、色々教えてくれたそうです。たらちねの・・・というのは、母にかかる枕詞でしたっけ?別にそんなこと知ったところで仕事に関係ないようなものなんですけどね。
 また、別のときに赴任してきた上司は、やたらコーヒー通で、サイフォンの使い方を教えてくれたり・・・。上司は定期的に異動があるので、いろいろな人がやってきたそうですが、その中の数人は、上記のような理由で、やたら印象に残っているらしいです。