画数

 昨日、開発部のM氏改め「殿」宛に郵便が来ました。殿が返信用として渡した封筒らしく、殿(顔に似合わず丸っこい文字を書くんです、このオッサンは)の筆跡で、XX行、と書いてあったんです。
 普通、返信するときは、その「行」って文字を上から取り消し線書いて、社名なら「御中」個人名なら「様」と書き直すところ、まったく書き直しておらず、それどころか封筒の裏に自社の住所すら書いてないっていう、いくらなんでも手抜きすぎるだろ、っていう郵便だったのです。
「殿、大丈夫なの、この取引先。」
「俺もそう思った。」
「でも見て、殿。これ、消印が押してない。たぶん、押し忘れてる。」
「本当だ。」
「この封筒、ちょうだい。この切手、再利用する。」
「じゃあ、切手を切り取ったら、この封筒の『行』を『様』に直しておけ。」
既に届いた封筒を私が直してどうするんだ、という問題はさておいて、せっかくなので、直して、殿が席を外している隙に机の上に置いておきました。筆ペンで、大きく「様」と書いて。
 翌日、つまり今日ですが、殿からメールが届いており、
『様とは何事だ。殿と書け。』
ですと。だって、自分で「様」って言ったじゃーん。ところで、殿と様ってどっちが偉いの?という返信を書いておいたところ(仕事しろよ)、
『殿の方が様より画数が多いから、殿が偉い。俺の名前もお前のより画数が多いから、俺の方が偉い!』
っていう返信の返信が来まして(仕事しろよ・・・)、でもちゃんと画数を調べたら、逆じゃないの、殿は13画で様は14画ですよ、殿敗れたり!という返信の返信の返信を送ることになったわけです(仕事・・・)。
 一応、ネット辞書で調べて、私が正しいという裏付けを得た上での返信の返信の返信だったわけですが、それで終わるかと思いきや、
『様は15画だ!ウソを教えたからお前の負けだ!』
という、どこまでも負けたくない根性が見えるメールがまたもや届き、だったらこれを見ろ!とばかりに、ネット辞書を調べたものを印刷し、なおかつメモ帳に1画目から14画目までを順に記した手書きも添えて、殿のデスクに置いておきました。すると殿が、
「俺だってネットで調べたんだ。」
って言うんですが、よくよく調べたら姓名判断のサイトで、リッシンベンは心という字が基なので4画と数えます、なんていう特殊な世界でした。その後、殿がすっごく残念そうに
「さらに調べたら、やっぱり様は14画だった。法務省がそう書いてる。法務省に言われたらなぁ・・・。」
と内線してきました。
 というわけで、やはりこの勝負はワタクシの勝ちね、ふっ、と、その後は気持ちよくお仕事できました。めでたし、めでたし。