自慢の娘

 殿こと開発部のM氏には高校生の娘さんがおりましてな。雑談の折には年中話題にあがるのです。最近、あんまりお父さんと会話してくれない(というより、高校生なんて勉強に遊びに忙しくて、っていう年頃なんでしょうね)お嬢さんですが、お父さんは可愛くて仕方ないらしい。
 今日も、ほれ、といきなりカードみたいなのを見せてくれて、何かと思ったら、お嬢さんのプリクラでした。
「お、美人!殿に似なくて良かったね。」
「俺に似て、美人なんだ。」
「いや、似なくて良かったね、可愛いね。」
「俺に似て!可愛いんだ。」
 しばらくエンドレスにそんな会話。
「どうしたの、お父さん単身赴任で寂しいだろうからあげるって言われて貰ったの?」
「いや、書類と一緒に持ってきてしまった。」
「・・・今頃探してるんじゃないの?」
「そうかもしれない。」
 でもさ、都会の子だからかもしれないけど、今時の高校生って大人っぽいなぁ。20年ほど前の記憶を遡るにしても・・・ムニャムニャムニャ。
「で?このプリクラ、くれるの?」
「バカ!やらないよ。娘に返さないと。」
と、殿はいそいそと大事そうにそのカードをカバンに仕舞ったんですが、案外返さないかもしれない。