そういえば

 死といえば、私にとって一番大きな影響があったのは父の死でした。ま、親は子供より先に亡くなるのが当たり前なんですが、予想より遥かに早かった。私が14歳のときでした。が、大人だろうと同級生だろうと、かわいそうと言われることが何よりの屈辱に思えました。生まれる前に父親と死別する場合だってあるし、人の死は自然の摂理だし、無条件に同情されることがイヤだったのですが、なんか可愛げのない考え方ですねー、我ながらねー。
 たまたま時期を前後して、同級生が母親を亡くしたそうで、その同級生は母を亡くすちょっと前に父親も亡くしておりました。
 しばらくしてから、校内の弁論大会があって、なぜか私がクラスの代表に選ばれました。テーマはちっとも覚えてないですが、ただ文章でチラっと父の死に触れている文があったです。が、それがメインテーマではないので、本当にさらーっと流してあったのですが、例の同級生も別のクラスの代表になっていて、彼女の弁論は両親を亡くしたことをズバリ取り上げていました。彼女が発表したときは、かなりの生徒が涙を流したし、先生も思わずハンカチで目を押さえてました。あれは、花粉症ではないはずだ。
 その弁論大会が終わった後、同じクラスの男子に
「たじんこももっと親父のことを書けば良かったのに。」
と言われて、
「同情されるのが何より嫌いだ。」
と答えたことにより、クイーン・オブ・冷酷非道の称号が得られました。
 今でも、父が中学生のときに亡くなったので、という話になると(大抵は、お父様の職業は、とか聞かれて答える)、まぁ大変だったわね、といわれるんですが、大変だったのはうちの母ちゃんで、中学生はさほど苦労してませんよ。苦労って何かということを考えるとまた頭が混乱してくるんですが、それでも私より苦労してる人はもっと大勢いるし。
 そんなことを考えると、やたら他人に同情したり、苦労してるなぁなんてことは言えなくて、やっぱりクイーン・オブ・冷酷非道に見えるんだろうなぁ。全然構わないけど。