カモカのおっちゃん

 田辺聖子さんの「残花亭日暦」を読み終わりました。日記という形式をとってあるものの、解説の林真理子さんによると、少々フィクションが入っているとのこと。でも、ほぼ事実に沿って書かれたものじゃないかな、と。
 私は、田辺作品は小説そのものよりも、エッセイから読んだので、おせいさん・イコール・エッセイという図式になっています。カモカのおっちゃんは、田辺先生のダンナさまがモデルと言われていますが、このおっちゃんのファンなのです。が、ずいぶん前に、田辺先生のダンナさまが亡くなった事を知り、また法律的には夫婦じゃなかったことも知り、ちょいと驚きました。もっとも、絶対に籍は入れないとかいう主張があったわけではなくて、忙しさにとりまぎれているうちに、何となく、というのが真相らしいですが。
 で、この本、ちょうどカモカのおっちゃん、じゃなかった、川野さんの最後の闘病を中心に展開しています。おせいさんのダンナさまへの深い愛情と、作家としての冷静な視点が入り混じり、あんまり涙にくれる雰囲気でもなく、しかしシンミリとした気持ちを与えてくれる。