花梨と私の闘い

 花梨は、飼い主バカを承知で言うなら、かなり頭が良いと思います。けど、その頭の良さは、人間の言うことにひたすら従順に、という方向ではなく、ゴーイングマイ・ウェイな方向に生かされています。少なくとも私はそう思う。
 私は、机の二番目の引き出しにオヤツをしのばせており、小腹が空いたときにソローっと空けて、おやつタイムを楽しんでいるのですが、もちろん人間のオヤツは犬にとって毒ですので、花梨が目の前にいないときにソローっと引き出しを開けているのです。だが、花梨は実に耳が良く、おやつの袋をあける音に、かなり敏感に反応します。子犬の頃は、食べ物とそうじゃないものの区別ナシに、ビニル袋のガサガサという音に反応していましたが、成長するとともに、食べ物とそうじゃないものを区別して聞き分けることが出来るようになりました。かなりの確率です。最初は匂いかな、とも思ったけれど、すごく離れていても、庭に出て遊んでいても、すっとんで来る…。霊能者みたい。で、最近は、この引き出しの音にも反応するようになりました。花梨が部屋の所定の位置でグースカ寝ているときに、ペンを取り出すために引き出しを引っ張ったら、花梨がむく!っと起きて、クンクン匂いを嗅ぎに。
「何、ペンだよ、ほら。」
と言ったら、また寝てしまって、最初は何で急に起きたのか分からなかったんですけど、どうやらオヤツを取り出した!と勘違いしたみたいです。
 これだけ学習する犬なので、上手にしつけたら、きっとすごい能力を発揮してくれるはず。ビーグルの特性として、四六時中地べたの匂いを嗅ぎまわるってのがあって、花梨も散歩の最中はほとんど地面の匂いばかり嗅いでいるんです。たぶん、猟犬の血がそうさせているんでしょうけど、この特性も上手に生かしてあげれば、麻薬探知犬とか、警察犬、災害救助犬として活躍できるかも。
 そう考えると、花梨も、我が家に飼われたばかりに、自分の才能を生かすことが出来なかったかも、なんて。我が家では、可愛いだけが取り柄ということになっているので。
 で、さっきから、こっそりクッキーを食べる(デブの元)私の行動に、イチイチ反応しては、茶の間やソファ(花梨の昼寝は、ソファが多い)からイチイチ私の部屋までチェックを入れに来ている花梨。私は花梨の足音が聞こえるたびに、お菓子を隠し、お口の中身を急いで飲み下し、鼻をクンクン言わす花梨に
「何も食べて無いよ、何も。ほれ、口の中にも何もない。」
なんて言い訳をしています。