帰るコール

 私の勤務先は、大抵の人が会社と家の距離が近いため、わざわざ帰るコールをしている人がいないか、ものすごく少ないと思っているのですが。まぁ、大抵は、残業していても、よほどのことじゃないかぎり、なんとなく同じような時間に帰りますわな。
 このブログですっかりお馴染みのN氏。ここのところ忙しい日が続いて、毎日9時くらいに帰っていたそうです。その時間に帰ると、可愛い二人の子供たちは、まだ小さい(幼稚園)こともあって、寝ているのだそうです。へたすると奥さんも寝てしまってたりして、まぁ作ってある夕飯を温めなおして食べて、自分も早々に寝る…という繰り返し。子供たちとのふれあいは、朝が中心のようです。
 が、先週の水曜日だったか、N氏がいつもより早く、6時くらいに帰りました。会議の予定が延期になり、だったら今日は早く帰ろうっと、と思ったようです。と、N氏がただいまーと帰ると家の中に誰もいない。ガラーン、シーン…。
「わー、パパァ、今日は早いね、お帰りいぃぃぃ。」
という子供たちの喜ぶ姿を想像していたN氏、拍子抜け。どうしたのかなーと、妻の携帯に電話すると、妻のお姉さんの家に子供ともども遊びに来ていて、夕飯もごちそうになっている、とのこと。
「それで、俺の夕飯は…?」
「まだ作ってないよ。」
つまり、いつも9時くらいに帰ってくる夫(N氏)のため、妻は7時とか8時に夕飯を作っていたというわけです。もちろん、自分と子供たちの分は、もっと早くに作って食べてしまっているわけです。そうね、9時前に寝かしつけるためには、6時くらいにご飯食べさせて、片付けしながらお風呂沸かして、7時半くらいにはお風呂も済ませておかないとねぇ。パパがいなくて、ママが一人で子供の面倒を二人見るのって、大変だろうなぁ、って私は想像しか出来ないけどさ。で、ふんふん、とN氏の話を聞いていた私に、
「どう思う?まだ作ってないって言うんだよ?自分たちは食べちゃってるのにさー。」
と、N氏はご不満の様子。
「で、その日はどうしたの?」
「スパゲティを作って食べた。俺の茹で方は完璧だったぜ。アルデンテ!」
「アルデンテは、ソースと絡める前の茹で加減を言うんでしょ。食べるときにアルデンテじゃ、芯がある状態だから固めだよ。」
「え、そうなの?」
「そうだよ、茹で上がりがアルデンテで、そこから作っておいたソースに投入してフライパンとかで温めながら絡めて、食べるときに丁度良くなるんだよ。好みもあるだろうけどさ…。それはともかく、いつも2回夕食作るなんて、奥さん偉いよねぇ。ありがたいねぇ。」
「…え?」
「何、もしかして、その日は『俺の分の夕飯が無かった』ことを怒ってるわけ?でもさ、最近ずっと9時過ぎに帰ってるって言ったじゃない?だから奥さん、今日もどうせ遅いんだろうなぁって思ってて、お姉さんから誘われて遊びに行って、ついでにご飯もご馳走してもらったわけでしょ?でも、帰ったらNさんの夕飯作るつもりだったんじゃないの。急にいつもと違う行動パターンで帰って、俺の夕飯が無いって文句言っても、ちょっと違うんじゃないの。」
「え?ちょっと待って。これは、俺が悪いの?」
「悪いとまでは言わないけどさ、いつもとあまりに違う時間に帰るんだから、それは奥さんを責められないと思うなぁ。むしろ、奥さんが毎日2回も夕飯作りしてくれてるの、すっごいことだと思うけどなぁ。」
横で聞いていたママさん社員も、おもいっきり肯定の意味で頭をこくこく振ってます。
「えええー…、なんで俺、家でも会社でも怒られてるのー…。」
N氏、しょぼーん。あ、ごめん…、同意してほしかったのは分かるんだけど、やっぱり私、奥さんの立場で考えてしまうわ、一回も奥さんなったことないけれど。っていうか、同じようなこと、奥さんに言われて、自分は納得できなかったのね、でも私にも奥さんと同じこと言われちゃって、横で聞いてたママさん社員にも追い討ちかけられて、余計にストレスになっちゃったわね、あはははは。
 でもね、もし、もしも、私が奥さんの立場だったらね、その日はともかく、普段の夕飯も、子供たちの分と一緒に作って、1回で済ませてしまうと思うのね。二人の子供の面倒も見ながら、ちゃんとダンナの分を作り直すって、本当にいい奥さんだと思うよぉ。いくら料理が好きだって言っても、毎日のことだから、面倒なときだって多々あると思う。少しでも温かいままで食べさせたいとか、子供に合わせたメニューじゃなくてダンナに合わせて献立考えるとか、奥さんなりに考えてると思うから、1日くらい、たまたまタイミングが合わなかったために、不機嫌になったらいけないと思うなぁ。
 不満顔のN氏を横目に、もしかしてこれが、男女の違いってやつかな、と。
 それに、母がしばらく不在だったとき、朝晩自分でご飯作っていて、たとえまずくとも出来てるご飯が出てくるありがたさを少々分かったところなので、以前の私とは違う意見なのかもしれない。今は、ホント、世の「ダンナさん」と同じですけどねぇ、わっはっは。
 まぁ、ショボーンとしているN氏を見ながら、
「ブログのいいネタが出来たぜー!」
って密かにほくそえむ私が、一番の悪人ですね、へへへ。へへへへへ。