サスケ脱走の巻

 サスケって何?って思いますよね。私が勤務する会社のお向かいのお宅の黒シバ犬の名前です。
 今日、いつもどおり出勤すると、駐車場に黒い犬がウロウロしているのが見えました。で、脱走してきた犬だな?と近寄ってみたら、首輪をしておりました。首輪に、連絡先が書いてないかな?と思ってしゃがみこんだ途端、人懐っこい黒シバ犬は駆け寄って、人に抱きついて顔をペロペロ。おいおい、困るよ、家には花梨がいるんだからさー、えへへへへ。って、キャバクラでオネエチャンにサービスしてもらったオヤジのような感想ですね。それはともかく、首輪には何も書いて無さそうで、それより雨降りの中をうろついていた黒シバ犬はビショビショで、私の作業服も一気にビショビショに。なんてことをしてくれるんじゃ。一旦会社に入って、荷物用のビニル紐を取ってきて、黒シバ犬をとっつかまえました。会社のある人が、
「たまに、向かい側のところを散歩しているのを見るんだよね。近所の犬じゃないかなぁ?」
 そんなら、直接届けた方が早いやね。で、ヒモを持って道路を渡って向かい側へ。そもそも、出勤時間に駐車場をウロウロしているのは危ないし、道路も交通量が多いところなので、危険。犬が家まで引っ張っていかないかなぁ?と期待したものの、本人にその気はないらしい。
 道の向かい側の路地を入って、住宅を覗き込んで、犬小屋があるかどうかを確認。ここは違う・・・、ここも違う・・・、おい、ワンコ、家を教えろよ。で、路地を戻って、並びの家を覗き込んだら、あ!犬小屋だ。あ!犬はいなくて、鎖だけある。ここがお前の家だな?で、チャイムをピーンポーン♪
「はーい。」
「ごめんください。たじんこと申しますが、この犬はもしかしてお宅の犬ではないでしょうか。」
出てきたおばちゃん、どう見てもパジャマ。
「あらっ!サスケ!」
黒シバ犬は、サスケという名前の模様。
「そうです、これはうちの犬です。ちょっと、おとーさん!」
呼ばれて出てきたおとーさん、アクビしてます。やっぱりパジャマです。寝起きです。ドッキリカメラかよ、小さい声で「おはよーございます」。
「あれっ、脱走したの。」
「ねぇ?」
 というわけで、無事、サスケを引き渡してきました。
 なぜかその後、その現場を見ていなかった人からも、
「犬の飼い主見つかったの?」
って色々な人から聞かれました。N係長からは、
「犬を連れて行ったときのたじんこちゃん、普通に散歩してる地元の人みたいになってたよ。」
という感想をいただきました。あとは、同期の女子から
「たじんこ、だめじゃん、花梨を連れてきちゃ。」
って言われました。
 よその犬のにおいをさせたら、花梨がヤキモチやくかしら、イヒヒヒ、と帰宅しましたが、匂いが薄れてしまっていたのか、もはやどーでもいいことなのか、花梨の反応はなし。すごくつまらない。ちぇっちぇっちぇっ。