ゴンちゃん

 私が高校生のとき、ゴンちゃんという猫を飼ってました。我が家の場合、近所の猫をかまっているうちに、猫が我が家に住み着くというパターンが割りと多くてですね。ゴンちゃんも、そんな風にして我が家の猫になった、元々はお隣の家の猫でした。
 元々は野良っていたのですが、お隣が猫好きで、エサをやってみたらすごく人懐こくて、そのまま飼い猫に昇格したゴンちゃんです。模様は、キジトラ。シッポがスラリと長くて。なぜか、犬とも仲良し。自分が猫だという自覚があるのか無いのか。あと、人懐こいのを通り越して図々しいところもあって、他の近所の御宅に、大型犬が居るにも係らずスタスタ上がりこんでソファで昼寝していくというツワモノでした。猫を追い飛ばすはずの大型犬も、なぜかゴンちゃんには一目おいていて、庭に入って来ても、普通にしてるんだとか。とにかくちょっと不思議なところのある猫でした。
 すっごく可愛がっていたけれど、多分交通事故にあったんだと思いますが、何日も帰ってこなくて探しに出て、変わり果てた姿になっていたのを見つけました。でも、見つけられただけでも良かったけれど。今思うと、ゴンちゃんが亡くなったのが分かってから1週間、自分でも何をしていたのか記憶が無くて、ペットロスだったんでしょうかね。大学生になっていた私、ゴンちゃんとのお別れを済ませた次の週に、自分のノートの酷さにビックリしました。何を書いてるのか皆目分からん。判読不能のミミズ文字。ちょうどそれが1週間分なんです。普通に日常生活を送ったつもりが、きっと心ここにあらずの状態だったのでしょう。友達にノートを借りまくったのですが、一緒に授業受けていたのに何故ノートをコピーするのか聞かれて、事情を説明したら、
「道理で最近のアンタは変だと思ったよ。」
と納得されてしまいました。そ、そんなに変だった?
 前置きが長くなりましたが、あんまり可愛がったゴンちゃん(あ、オスなんだけど、ちゃん付け)との別れは大変辛く、私はもう二度と動物を飼わない、と決心したのです。ところがどっこい、今は花梨が。そうです、ゴンちゃんのお墓に向かって、ゴメン・でももう二度と猫は飼わない・今度飼うのは犬だから!とワケわからない説明をしたものでした。
 今朝、布団を干していたら、花梨が庭をすっとんで行ったので、後を追いかけたら猫が庭に来ていたのでした。猫も、犬がいるとは思わなかったようで、慌てて逃げて、梅の木の枝に捕まっています。バカだねぇ、早くそこからお隣の塀に降りて逃げなさいよ、と言いながら猫を見上げたら、あのゴンちゃんにそっくり。顔はゴンちゃんの方が美男子だったけど、スラリと長い尻尾といい、キジトラの模様といい、目の色が淡いグリーンなところといい、同じだわ!
 単なる偶然なんだけど、ゴンちゃんが会いに来てくれたような気がして、嬉しかったのでした。また会いたい。